2015年12月21日月曜日

旅の仲間・高原のラベンダーが香るバーム our beautiful travel companion

雨季が明け、夜に一斉に飛ばされる熱気球が有名な11月の満月と水と火のお祭りロイクラトーンが終わり、「ルドゥ・ナーウ(寒い季節)」と呼ばれる爽やかな季節とともに、チェンマイにいよいよ 観光のハイシーズンがやってきました。
「ルドゥ・ナーウ」のチェンマイは、陽射しも少し和らぎ、乾いた空気は軽やかで、30度近くまで昼の気温が上がってもそれと感じさせません。朝夕など気温は15度、時には10度を割ることもあり、いかにもリゾート地らしいとても爽やかなお天気となるのです。

軽やかな空気と熱帯にしては優しくフラジャイルな陽射しに誘われ、旅行者も地元住人も、日中外にいる時間が嬉しくてついつい長くなってしまうこの季節。
気づけば、うっかり日焼けで頬や唇のあたりが熱っぽくひりついたり、洗顔後の目元のハリが心もとなかったり、 手元はがさついたりと、肌のあちらこちらが、丁寧なケアを求める合図を投げかけてきます。
旅行者には、 更に日本の冷えびえした空気や飛行機や空港内の乾燥、移動や異なる気候による疲れという追い討ちがかかります。そんな時、私たち在留外国人も、ツーリストとしてやってくる友人たちもがぜん手放せなくなるのが、ラベンダーの香りと優しいオイルとミツロウの手触りが頼もしい、ラベンダー・アルガンバーム(クリーム)です。

このバーム、まずはアルガンオイルに含まれるたっぷりのビタミンEが、疲れた肌に力強さを取り戻し、ミツロウはガーゼやカシミアのように優しく肌をカバーして乾燥を防ぎ、ぴりつき過敏になった皮膚感覚を落ち着かせてくれます。
これだけでも、敏感になっている肌には優しいいたわりとなりますが、私たちのバームにはモロッコの高原で採れたとても香り高く力強さを持つラベンダー精油が加わっているところが、さらに特別なところです。
ラベンダー精油は、よく知られる香りによるリラクゼーション効果のほか、消炎、抗菌、鎮痛、軽いやけどのケアにも古くから使われてきているもの。
おかげで、私たちのバームには、お風呂上がりのリラックス用練り香、たくさん町を歩いたり、ヨガなどのワークショップを受けた後の マッサージバーム、日焼けで肌にどこかほてりが残る時のアフターサンケア、虫除け兼、虫刺されケア、リップクリーム、日ざしや乾きにぱさつく髪をいたわり、形も整えるヘアワックスなど 、工夫次第で心にも実用にも心地良い旅の相棒としての頼もしい働きが、これでもかというくらいに加わっているのです。
また、日本の冬のおかげで少し荒れ気味のかかとやひじが、こちらのお天気に合わせたサンダルや半袖で少し気になる時も、その部分に少し厚めに塗り込めば、すぐに滑らかな肌理に整えることができるのも、旅支度や出発が慌ただしかった人にはありがたいことではないでしょうか。

もちろん、これだけの多機能ぶりですから、日本へ戻った後もこのラベンダー・アルガンバームはその能力を冬のケアに大いに役立ててくれます
普段のきちんとそして心地良い生活の小節線を刻むバームとしても、何もかもが普段と違う思いがけない旅の心強い相棒としても、どんな時も私たちのラベンダー・アルガンバームは手放せない存在になるのではないでしょうか。

「人はさまざまな旅をして、結局その人が持っていたものだけを持ち帰る」といった 言葉をゲーテは残しているそうです。その心は、普段から積み重ねてきたものこそが、旅を通して、更に深く身につくということでしょうか。
日々の生活でも、旅の中でもいつも変わらずともにある私たちのシンプルなのに賢く心強いバームにも、この言葉はぴたりと当てはまる気がしてきます。この素敵なバームをお守りに、日常も旅先の非日常もシンプルに美しく豊かに過ごしたいもの、とちょっぴり自戒を込めつつ思うのでした。(Asae Hanaoka)


石鹸のミツロウコーティングの話 our beeswax coated soap

手作り石鹸に関する情報もネットや書籍でたくさん得られるようになりました。輸入食材店などでお気に入りのオリーブオイルを買い、薬局で苛性ソーダを調達し、自宅で手作り石鹸を楽しまれる方もいらっしゃるでしょう。
石鹸づくりは薬品を使った化学反応ですので、マスクや手袋、エプロンなど、きちんとした防備と細心の注意は欠かせませんが、牛乳パックなどで型を作り、発泡スチロールの保温BOXなどを利用すれば、コールドプロセス石鹸づくりも意外と手軽にできるものです。

コールドプロセス石鹸は、上質な材料であればあるほどその原料オイルに含まれるビタミン類など有用成分を活かせますし、また保湿成分もたっぷりで、初めて使う方はその洗い心地に驚かれるでしょう。
しかしその潤い成分であるグリセリンは水に溶けやすく、製品化するためにはきちんと外気と遮断して密封しなければなりません。

私たちは今から10年以上前、コールドプロセス石鹸を多層ポリ袋で真空パックすることを考案し、市場にリリースしてきました。そして来春リニューアルデビューする私たちのブランド「eavam」では、この石鹸を密封する方法をさらに一歩進め(もしくは戻り?)ミツロウでコーティングした石鹸をリリースします。

ミツロウはボトルに入ったお酒を封するのに使ったり、チーズをコーティングしたりと、世界の各地で大切なものを密封するのに昔から使われてきた素材です。大切な手紙を封巻するシーリングワックスもミツロウです。
日本は印鑑社会なので、役所などへ提出する文書にはハンコは欠かせませんし、夏休みの小学生たち(男の子たち)は電車で回るスタンプラリーが大好きです。会社では各部署の承認印を集めてまわるスタンプラリーも未だ健在と聞きますので、印章にはちょっと垢抜けない印象もあります。
そこへゆくとイギリス映画『エリザベス』の冒頭で、赤いワックスに大きなシーリングスタンプを押すシーンはとても恐ろしくもでも優雅で印象的でした。あのワックスもミツロウです。

こうした古くて新しいトラディショナルな自然素材を再発見し、これを私たちの大切なコールドプロセス石鹸を密封する素材としたeavamの「ミツロウコーティング石鹸」は、そのアイデアと実用性を認められ、日本で特許を取得しています。
そんな私たち自慢の石鹸なのですが、今の寒い季節は少しばかり気をつけていただきたい事があります。

私たちが使うミツロウは、多くの大規模な養蜂農家がミツバチの巣のベースに用いるパラフィンなどの、夾雑物をまったく使わない、昔ながらのミツロウ100%のものに限っています。ラムヤイの花から蜜を集めるミツバチの巣から精製するこのミツロウは、アルガンクリームなど私たちのコスメティック製品の基剤にも使われるものです。
識別用(着色用)に付加するものもガスールなどの自然素材に限定していますので、いずれにしても、ケミカルな柔軟剤や乳化剤、石油由来の添加物は一切加えていません。

ですので、春や夏の暖かい季節(というかチェンマイではむしろ暑いのですが)なら、ミツロウも柔軟性があって扱いやすく、石鹸のコーティングを剥がすのも容易いです。
しかし、今の日本のような寒い時期には、ミツロウが硬くなり、石鹸の表面に張り付いたようになって、なかなか剥がしにくい場合もあります。
「自然素材」「天然素材」と言ってしまうのは簡単ですが、そこは一工夫必要です。

寒い季節の冷えて固まったミツロウコーティング石鹸は、まず剥がす前にゆっくりと温めてください。コタツなどがあれば最高で、コタツ布団の中で10~15分くらい温めると比較的上手く剥がれます。コタツがなければドライヤーが使えます。ドライヤーを弱にして数分間温風を当ててみてください。手のひらで触ってしっかり人肌になったら、ゆっくり紐を引っ張って剥がしてください。
一周ぐるりと剥離紐が外れたら、石鹸を手のひらで持ちながら、指の腹で力を加えながら優しく剥がしてみてください。コンパクトを開けるような感じでしょうか。最初は多少力が要りますが、密着したミツロウと石鹸の間にプシュっと空気が入ってきれいに剥がせたときは、結構快感だったりします。
手間の掛かる商品で申し訳ありません。(Jiro Ohahsi)

*eavamのミツロウコーティング石鹸シリーズは、来春日本でもデビューする予定です。手間の掛かる商品ですが、皆様が実際に手にとっていただけるまで、いましばらくお待ちください。

2015年12月20日日曜日

香り高いコーヒーでリラックス・ボディケア coffee is our best friend !

コーヒーは、北回帰線と南回帰線の間のコーヒーベルトと言われる地域が栽培に適しているそうですが、うれしいことにタイもこの芳しい地域に含まれています。なかでも北タイのチェンマイやチェンライの山岳部の豊かな水や涼しい気候は美味しいコーヒーの育成に適しているうえ、タイ王室による山岳民族の生活向上プロジェクトとしてコーヒー栽培が奨励されたこともあり、この地域のコーヒー栽培が大きな産業に育っていくさまは目覚しいものがあります。
美味しさのみならず、安全性や独自性を追求し、森の中でオーガニックコーヒーを栽培するグループも着々と増えています。

コーヒーといえば、数年前までは、練乳やシロップがたっぷりはいった甘い甘いタイ式コーヒー(カフェーボーランと呼ばれる昔風コーヒーで、昔はタマリンドなどコーヒー以外の素材を用いて作られていたとのこと。もちろんこちらもどこか懐かしい味で、タイの味として永遠の定番です)が一般的だったのが、チェンマイでも町のあちこちに「カフェ・ソット(フレッシュコーヒー)」という看板を出して、本格的なエスプレッソやドリップコーヒーを出すカフェが増えました。
長らく本物の美味しいコーヒーに飢えていた在留外国人、旅行者や流行に敏感でシンプルでゆったりした生活を志向する若いタイの人たちにもフレッシュコーヒーは歓迎され、味へのこだわりはもちろん、古いタイの木造家屋をリノベートしたカフェ、土でできたエコハウスのカフェ、郊外の眺望の良い丘の上の手作りの素朴なオープンテラスカフェ、渓谷の小川の上にベンチを並べて川の流れに足をつけながらくつろぐカフェ 、ジャングルの中の大木の上のカフェ( !!) などなど、日本では簡単には実現できない奇想のカフェもでき、それぞれに個性的な人たちが集まってクラフトマーケットや写真展が開かれたり、カフェ文化のようなものの萌芽も感じられます。

少し前に長時間のカフェでのミーティングに席料として2,000バーツが請求されたとニュースでも話題になりましたが、これはあくまで慌ただしい都会での出来事、田舎のカフェではWiFiも当たり前に完備されていることもあって、自分の庭か部屋のごとくじっくり仕事をしたり、世間話に花を咲かせて何時間も過ごす人たちも多く、カフェにこんなゆったり寛容な空気もチェンマイならではのことだと思え、昔の中国の茶館、ウィーンのカフェやイスタンブールやイギリスのコーヒーハウスに様々な人間模様や文化の始まりがあったことと重なって見えたりもします。
そんな風にずっと前からあったかのようにチェンマイに馴染んでしまったコーヒーの恩恵を私も存分に受けていますが、そうなると気になりはじめるのは、毎日それなりの量がでてくるコーヒーがら、コーヒーを入れたあとの豆の粉の行方・再利用法です。

部屋や冷蔵庫の消臭剤や針山の中味、皮類のワックスの代用品や堆肥などが有名ですが、これらコーヒーがらの再利用法を眺めていると、油分がキーワードになった方法が多い気がします。実際、ターキッシュコーヒーやフレンチプレスで入れたコーヒーの表面にはうっすらと油脂が浮き上がり、生命の源の植物の種でもあるコーヒーが本来それなりに油脂を含んでいるとわかります。
改めて少し調べてみると、コーヒーオイルにはアンチエイジングに効果的な脂肪酸も含まれているようでもあります !!

そこで思いついたのが、今回ご紹介する使用済みのコーヒーの粉を入れたガスールのボディスクラブです。
まず、コーヒー豆に含まれる適度な油脂が肌や髪を重くなりすぎず滑らかに整えますし、ガスールやコーヒーはデオドラント効果があり、さらにコーヒー豆の粒子は優しいスクラブ効果を果たしますから、ボディケアにぴったりです。
さらに油分の他に含まれているカフェインやポリフェノールは肌を引き締める効果があるのですから、セルライトやたるみ、ガサつきが気になる部分などにもぴったり。かてて加えて香りには抜群のリラクゼーション効果もあるのですから、もう至れりつくせりの素材と言えそうです。

レシピは、大さじ3杯のガスールペーストに使用済みの乾燥していない新鮮なコーヒー粉を1.5杯(好みで増減させてください)。
双方をよく 混ぜてから、 全身にやさしくなじませ、洗い流してください。
かかとやひじなどガサつきやすい部分、セルライトが気になる腿の周りなどは、少し丁寧にマッサージしてから洗い流すとさらに効果的です。
普段から石鹸シャンプーを使っている髪には、ヘアパックとしても心地よい香りと仕上がりとなります。
飲めば魔法のようなリフレッシュとリラックスを与えてくれるコーヒー、肌でもその素晴らしい効果を楽しんでみるのはいかがでしょうか。(Asae Hanaoka)

2015年12月15日火曜日

ガスール、冬のビター&スイート winter ghassoul recipe , bitter and sweet

日本はいよいよ寒さが厳しくなるちょうど今ごろ、チェンマイも眠るには冬布団が必要で朝夕は厚着をしなくてはならない熱帯の冬を迎えます。そんなこの季節、どちらにいても気になるのは肌の乾燥です。
冷たい風や、身体の外側だけが熱く、肌が赤く膨らんでくるような気がしてしまう暖房、乾いた空気に、肌はどことなし強張ったり、ぴりついたりしないでしょうか? でも、やはりメイクや皮脂の汚れなどもきちんと取り去りリフレッシュすることも欠かさず、清浄でみずみずしい肌を冬でも保ちたいのもまた本心です。

そんな時はモロッコ産のクレイ・ガスールに、食べたらリッチなコクがあって美味しいものを少し加えると、クレンジングと保湿を兼ねた肌に優しい、世にも贅沢で優雅なクレンジングが簡単にできてとても快適・便利です。

洗浄力はそれだけで十分にあるのがガスールなので、キッチンを見回してオリーブオイルやオートミール、すりごまやアーモンドパウダー、ヨーグルトなど、油分やたんぱく質、心地よい香りがあるものを選んで、ガスールに練りこめば良いのです。
そして後はいつもどおり、肌にガスールをなじませ、洗い流すだけ。
ガスールが、肌をすっきり清らかに洗い上げながら、ガスールによって程よく水と乳化した食材たちの油分や保湿成分、香りは、肌には潤い、気持ちにはふっくらした甘い感触を与えてくれます。



そんなガスールの働きを生かし、例えば、こんなレシピはどうでしょう?

もともとチョコレートと間違えられそうな、
優しげで美味しそうなルックスのガスールなので、ココアと混ぜてみるのです。
寒い季節や疲れた時、気持ちを優しく甘やかしてくれる一番の飲み物と言えば、やはりココアですし、ココアには、肌を引き締めるポリフェノールや、しっとりと滑らかに保湿する油分がたっぷり含まれています。

フェイス、髪はもちろん、全身に使って、香りも感触も美味しい肌を作り上げるのも、楽しいのではないでしょうか。


作り方は簡単です。
ココアパウダー大さじ1杯をガスールペースト大さじ1杯に混ぜて練り、少し水を加えて柔らかさを調節するだけ。艶やかな生チョコレート風の仕上がりになります(この量はフェイス用です。全身用にはこの2〜3倍の量をご用意ください)。


または、洗顔もして部屋でゆっくりするためのココアをちょっぴり多めに作り、それで、ガスールを溶いてしまう方法。
ココアパウダーの他に加えた、ミルクや蜂蜜、砂糖が肌の保湿に更に力を貸してくれます。(この場合、ココアにスパイスを入れるのは、肌の刺激になるのでやめましょう)。


「赤い薔薇ソースの伝説」という不思議な恋愛映画の中で、悲しい境遇の少女が、その気持ちや境遇を紛らわせるように、夜、ココアをかき混ぜているシーンがありました。この少女は、料理した食べ物を使って相手に思いを伝える事ができる不思議な能力を持っていました。
私たちにはそんな力はありませんが、それでも丁寧にこしらえたものに触れたり食べれば、わき起こる感覚は間違いなくあるもの。私たちのガスールも大勢の人たちが大切に心を込めて作り上げたがものです。優しく心と肌を甘やかす気持ちで、このレシピを作っていただけたらと思います。清浄でなめらかな透明なヴェールが肌を包むような感触に驚かれるはずです。
 洗顔後には、ラベンダーの香りのアルガンクリームを薄く肌に伸ばしてください
ココアの甘さと渋さにラベンダーの静けさが重なって、冬の夜長にぴったりな、よりリラックスできる香りを楽しめます。(Asae.Hanaoka)

*ご注意:
肌質、体質によっては肌に合わない素材もあります。
ガスールに混ぜる素材は、ご自身の肌質やアレルギーの有無に合わせてお選びください。

2015年11月13日金曜日

白  our symbol color is white. the color of origin, beginning, rebirth

私たちの会社や製品を象徴する色といえば、白です。
例えば、器やパッケージの色がまず白です。
工場は壁は外壁も内壁も天井も、カーテンも、椅子やテーブルのカバーなどのリネン類はもちろん、
スタッフたちの服の色も基調は白です。
家具や器具類も、清潔さや製品の状態を見やすく白系の色。
そうでなければ、チークやステンレスの素の色である薄茶や銀や薄墨色が、 空間のほとんどを占めています。
もし少しだけ色があるとしたら、ヘンプ布の生成りやミツロウのごく薄いクリーム色、
もしくは植物オイルなど淡い微細なトーンの変化の中にある素材そのものの、かすかな色あいでしょう。
作業時の服は、シックな色の草木染めのシャツやエプロンなどを作ってみたこともあるのですが、
綺麗好きなスタッフたちの頻繁な洗濯のおかげで、みるみるその色は薄くなってしまいましたし、
年々綿密になる品質管理や入室前の衣服に付いたホコリのチェックなどの現実面でも白が良いようで、
洗いざらしのきなりや白の服が主流にもどってしまいました。
自らの手先や行き届いた眼差しによる細かい作業のための適度な室内の明るさと遮光のためには、
これまた白の少し薄めのコットンのカーテンが良いようで、
工場長のジャックさん自ら布の厚さや織りを吟味して選んだものがかけられています。
この布、自分たちで作る石鹸の余りを使っての洗濯と、チェンマイの田舎の澄んだ日光のおかげで、
買ったばかりの頃よりも、自然な白さが冴えてきたようでさえあります。
少しだけ甘い淡い色がさしこまれた白い空間で白い人たちが働いている光景は、
製造部門で働いているスタッフたちが全員女性のせいか、
女学校の寄宿舎か修道院のような、柔らかさがありながら清々しい気配が感じられます。

それにしても白。

なぜ私たちはかくも白にこだわってしまうのでしょうか。
製造という現実的な事情がありながらも、どうしてもそれだけではない気がします。
たとえば炎や光や星の色ならば、白はあらゆる光の色を内包した色であり、
エネルギーの高さを示していますし、
色相の中で言えば、白とは実は色がない状態。
また空白や白紙という言葉では、それは物事の始まりや何かの到来を待つ場所や状態であり、
「白紙に戻す」のとおり、ものごとの終わりや再出発・再生も意味します。
それは、いっけん何も無いようでいて、何かに変容する可能性とそのエネルギーをはらんだ状態です。
また、すっぴんや 素、素材という未生の状態でもあるでしょう。
更に「しろ」という音には苗代のように生命の揺籃を暗示する響きがあり、
やはり、始まりや成長、それを守ることや場を想起させます。

漢文学者 白川静の説によれば、漢字の白は野ざらしになり、
漂白された頭蓋骨の形と色から生まれた形であり、その白い骨に古代の人々は霊力を感じたとも言います。
それは霊魂や生命の器を思わせたからでしょう。
白が赤ちゃんの産着やウェディングドレスなどの婚姻や誕生の色であり、
逆に地域によっては死出の旅に着せられる帷子、また喪服の色でもあり、
誕生や死とも関わりが深い色であることとも関係がありそうです。

それらをふまえて私たちの工場や製品を見るならば、
そこはものが生まれる産屋であり、
物事が絶えず更新され続ける、経験を積みつづけながらも、変わらず初々しい場所であり、
そんな場所を保ち、新鮮な事ども、日々を迎えるべく居ずまいをただし、
たゆまぬ心配りと努力をつづける人達が集まり力を注ぐ場所、
シンプルながら豊かな何かが到来し、始まり、生成する、
豊かな広場のような、 素の場所、白き場所といえそうです。

また、今新たに始まろうとしている私たちのブランドeavam(イーヴァム)のプロダクトもやはり白です。
陶の器は丸く、月代や卵、繭玉のような再生や始まりの形をし、
楮の手すき紙のやわらかな肌合いは、まるで産着のようです。
それらの中には、北タイという場所の手仕事の歴史や、
スタッフたちの創意や試みの時間が込められた、
美しく優しい手触りの石鹸やクリームが潜んでいます。

こうして白が象徴するものを見渡し、私たちの物作りの来し方を振り返ると、
白とは、色というよりは、ものごとに向かう時の力に満ちいきいきとした姿勢や状態、
方法、立ち居振る舞いの質を指す言葉、存在のスタイルとでも言うべきもののような気がしてきます。
ものごとの普遍性、原型を忘れず内に秘めて愛しながら、常に新鮮な姿を、言葉や形にして顕わし続ける。
それが私たちの仕事のありよう、役割ではないかと思え、そのように仕事を続けていきたいと、
新ブランドの立ち上げの時にさし掛かりながら、気持ちを新たにする私たちです。(Asae.Hanaoka)



2015年11月4日水曜日

sal laboratories → eavam

皆さま
私たちsal laboratoriesは2015年春、タイ・チェンマイ郊外の小さな工房で産声を上げました。夏にはタイ国内市場にてonlineストアが完成し、おかげさまで秋には新たな製品を3つ、そのラインナップに加えることができました。

その間にいただいた、皆さまからのご要望をうけ、私たちはこれから、さらに広い地域の、より多くの方々に、私たちのものづくりの考え方を、そして私たちの作る製品を実際にお手元に届けられるよう、次のステップへと進んで参ります。

そのために、私たちはこのたび新たにインターナショナル・ブランドとしてリニューアルすることになりましたことを、皆さまにご報告いたします。

新しい考え方と新しい設計による製品開発は時間とエネルギーを要します。デビューに向けてしばらくの間、準備期間をいただきますことをご容赦ください。


この新しいブランドのデビューは、日本にて行います。来年前半には日本の皆さまにご紹介できるでしょう。
新しいブランドは名前を「eavam」(イーヴァム)といいます。どうぞご期待ください。(大橋二郎/Jiro Ohashi)

2015年10月15日木曜日

ロゴとシンボルマーク logo and symbol

この夏、日本からはオリンピックのロゴについて喧しい話が伝え聞こえました。ロゴやシンボルマークは、さまざまな商店の屋号、学校の校章、所属する地域や役所のマーク、そして商品やブランドの顔として国や地域を超えて親しまれています。
美しくて格好よくて、その指し示す内容が一目でわかるようなマークは皆に愛されます。しかし、どことなく稚拙で配色もおかしかったり、何を伝えているのかわからないようなマーク、「らしくない」マークは嫌われます。これはデザインの専門家であるとか素人であるとかは関係のない、至極明確なことです。

私たちsallabのロゴは、一見アルファベットの小文字をタイピングしただけのようにも見えますが、考え抜いて作られています。タイの特許庁に商標登録する際にも「文字ではなく、シンボルマークはないのですか? 文字を打っただけのマークは(登録が)難しいかもしれませんね」と言われたのを覚えています。もちろん文字を打っただけじゃないのですが……。
ちなみにタイの役所では、ロゴマークとロゴタイプの二つのロゴの認識が薄く、ロゴ=シンボルマークと認識されるようです(たまたまそういう担当官に当たったのかもしれません)。
いずれにしても、まだまだ無名の私たちです。まずは母語でしっかりと相談できるところから始めようと、幸い専門家にも恵まれ、日本を起点に各種登録申請を進めました。ロゴなどの商標や意匠、場合によっては特許など、知財の大切さとありがたさを実感するこのごろです。

ブランドを立ち上げて間もない私たちが、初期からこうして知財の重要性を強く意識するのには、タイに進出する日系企業の礎を築いた大先輩の存在がありました。1960年代に自動車メーカーの駐在員としてタイに渡り、タイ全土を巡りながら拠点を設立、現地の人々との関係性を構築しつつビジネスの素地を築かれた方です。
現在、多くの日本企業がタイの人々に受け入れられ、こうしてビジネスを展開できるのも、この大先輩の存在なくしては語れないと思います。70歳を過ぎた今も現役で現地法人のトップを務められ、タイで最大規模の法律事務所では顧問として日系案件のコーディネートをされ、また海外最大規模の日本人会であるタイ国日本人会の会長も務められています。
(そんな方とはまったく知らず、ある時たまたまお正月に日本行きの飛行機に乗っていたところ、日本の新聞の東南アジア版で、新春の挨拶としてこの方のコメントが写真入りで掲載されているのを見て腰を抜かしました)

ほとんど飛び込みでご相談にあがったどこの馬の骨ともしれない私たちの話を、とても丁寧に、そして親身に聞いていただき、バンコク中心部のタワービルの数フロアをオフィスとする法律事務所で、チャオプラヤー河を眺めながらタイ、東南アジアにおける知財の現状とその重要性を説いていただいたのを今も覚えています。

タイは東南アジア屈指の製造国です。商標をはじめとした知財の考え方、捉え方も日本や欧米とはまた違ったものがあります。それぞれ立場を変えてみるとわかりますが、コピーされる側とコピー商品を作る側、(商標を)守る側と攻める側ではその認識がまったく異なるということです。
ロゴの意匠デザインを例に取っても、日本や欧米は、それぞれの印象や独自性を重視して類似と非類似を厳密に区別するのに対して、この東南アジアの激しいオリジナリティの攻防の現場においては、尊重や重視などばかりはいっていられません。まずは先行者が苦労して作り上げ獲得した知的財産をいかに守るかこそが問題です。
当初はまったく理解できなかったし、何を言っているかさえわかりませんでした。日本のものづくり企業とタイの中小企業の両方の属性を持って製品を作る側としては、この現実は身につまされる思いです。

日本でも友人たちに助けられています。日本で長らく一緒に仕事をしてきた信頼するグラフィックデザイナーと、日本における知財関連の代理人となってもらった弁理士。どちらも大切な友人ですが、優秀な人と一緒に仕事をするのは楽しいですね。グラフィックデザイナー氏は日本国内よりもむしろ海外での評価が高い人で、独reddotで最高賞を受賞しています。弁理士女史は小中学校からの同級生で東大卒の才媛です。彼らは共に日本を拠点に仕事をしていますが、チェンマイの地でブランドを立ち上げた際に、とても力になってくれました。

まずは看板を掲げようとロゴを作り各国での商標登録、意匠登録もろもろを行いました。では看板は一枚でいいのか? というと世の中を見渡すとそうでもありません。日本の場合、よくある例としては欧文ロゴと平仮名(もしくは片仮名)ロゴ、縦書きと横書き、そして文字要素のないシンボルマーク。ほかにも印刷を前提とした場合は4cのカラーと1cのモノクロロゴも必要でしょう。配置するスペースによってはシンボルマークとロゴタイプの組み合わせや、またはどちらか一方というのも一般的です。

また、商標権は属地主義(各国の権利の効力が当該国の領域内においてのみ認められる)を基本としますから、ある国では大丈夫でも、また別の国ではすでに類似の商標が登録されている場合だってあるでしょう。
自動車メーカーの車種名などはよい例で、タイではマツダのATENZAは「Mazda 6」、トヨタのVitzは「YARIS」、ホンダのFITは「Jazz」として売られています。現地の言葉の語感やスラング等との関係、マーケティングの兼ね合いもあるでしょうし、また相手国の商標登録状況もあるでしょう。

そんなこんなで、私たちもさまざまな状況に柔軟に対応するために、複数のロゴ、市場ごとの現地ブランド名の用意も始めています。私たちは製品に「Designed by sal laboratories in Chiangmai」と記しています。チェンマイからさまざまな市場へ向けたものづくりを行ってゆきます。

私たちはこれから各国の市場へ向けたリニューアル準備に入ります。新しいロゴやブランド名も、しばらくしたらお見せできるかもしれません。(Jiro Ohashi)

2015年10月5日月曜日

シンプルは無限〜風呂敷包みとバナナの葉 furoshiki and banana leaves

すっかり気に入って日々使っているsallabのガスール、そのリフィルパッケージの包装が美しくて、その包み方の原型というトゥアナオを、市場に寄る度に探してしまう。
「トゥア」というのは豆、「ナオ」というのは腐った、という意味で、トゥアナオというのは大豆を発酵させて作る食べ物・調味料である。日本でいう納豆のようなものだ。よくバナナの葉などで包まれている。

周りを見渡してみると、バナナの葉は、スープの材料を束ねるものに使われていたり、お菓子の包みや容器として、また茶碗蒸しのような卵料理の器としても使われている。なんでも殺菌効果もあるようで、生肉や鮮魚を並べるシートとして使われているのもよく見かける。

バナナは、タイでは自生している場合も多く、とても身近な果物である。家の庭や道端にバナナがたわわに実っていたりする。赤ちゃんの離乳食も10分粥ではなくて、バナナからスタートするという。

時々、家の軒先にバナナの葉を干してあるのを見かけるのだが、食べものの容器を作ったり、料理で何かを包んだりするのに使うのだろう。平面状のバナナの葉が自由に形を変えて、器として、包むものとして大活躍してる。昔ながらの知恵が今もなおタイの日常生活の中で失われることなく、大切に受け継がれている。

私が生まれ育った沖縄では、毎年旧暦の128日に月桃の葉で包んで蒸しあげるお餅、ムーチーを年齢の数食べる習慣があるが(もうこの歳になると、真面目に年齢の数なんて食べられない・・・)、月桃の香りが甘く、素材はいたってシンプルなお餅なのに、その香りがアクセントになってとても美味しいものである。葉っぱで包んだその見た目もやはり美しい。

平面状の葉っぱが自由自在に形を変えて、食材をまとめたり、食べ物を包んだり、容器となったりするのは、用途に応じて作られたプラスチックの容器とは違い、シンプルな形状のものにこそ無限の可能性が秘められているよう。一枚の正方形の折り紙から数知れない立体の造形を作ることができることと似ている。

そんなことを考えていて思い出したのだが、学生の頃、風呂敷をよく使っていて、イギリスに留学した際に、担当教授に日本のバッグだと言ってプレゼントしたことがある。
四角いものでも、丸いものでも、長いものでも、どんな形でも包んで、端っこを結んで取っ手にすればバッグになる、と威勢よく日本の伝統文化なるものを誇らしげに説明したのだが、翌朝ブロンドヘアーで背の高い女性の教授は、和柄の風呂敷を無地のシンプルなワンピースと上手に色合わせをして、スカーフとして首のまわりに巻いて教壇に立った。目を丸くしてびっくりしている私と目が合うと、ウィンクをしてくれた。

市場の一角でそんな昔のことを思い出していたら、激しく降っていたスコールももうすぐ止みそう。チェンマイの雨季もいよいよ終盤だ。

なおえ スワンナチャン(Naoe Suwannachan

沖縄県出身。津田塾大学国際関係学科卒業、在学中に英国エジンバラ大学へ留学。
2002年、服飾関係の仕事でタイ・チェンマイへ初めて来る。
仕事の契約期間の1年の駐在のつもりが、タイ人の夫と結婚して今年でチェンマイ滞在も13年目。
夫の旅行業務・撮影コーディネートの手伝いをしながら、服飾の仕事も続けている。