2016年1月21日木曜日

年を重ねる  year by year

2015年は何事も慌ただしく盛りだくさんでした。
今年も2016年もその慌ただしさは続いているため、今までで一番短い年末年始休業で、4日から私たちは早速普段通りに製造をはじめています。

そして、各部門のリーダーはこれからの計画進行にそなえて、新たなスケジュール草案、資材などの準備の打ち合わせです。
中でも相談ごとが多いのは、長らく製造現場の長を担っているジャックさん。
一昨日もミーティングが多い日でしたが、彼女は簡単なもの、少し悩ましいもの、などなど、私の頭が疲れてしまわないように案件の順番に緩急をつけて相談を進行する手際は、さすがです。おかげで時には、眉間にしわを寄せたりしながらも、テンポよく1時間が過ぎ、相談を終えた後にはスポーツか武道の真剣勝負を終えた後のような、さっぱり明るい気持ちになってしまい、
「今年もよろしくお願いします! お互いを信じながら、頑張りましょうね!」と言葉を掛け合うことができました。

すると・・。
「あっと、忘れるところだった! もう一つあるんです」
にんまりと笑うジャックさん。
こういう時は大抵、相当重たい話か、良い話です。
今日の感じだと、良いことかなぁ。。と、こちらも予想をつけながら、
「なあに?」
「うふふ。あのね・・。んぅひひひひひひ」
すべきことを終えて、ちょっとタガが外れたジャックさんは笑いが止まらなくなりはじめます。
「ジャックさん? ジャックさん!」
同席していた、ジャックさんの気持ちをいつも汲んで、我がこととして通訳もしてくれる桃子さんもなにやら嬉しそう。
「あのね。ノックノイちゃん、昨日の朝、無事赤ちゃんを産んだんです。男の子で髪がふさふさした元気な子ですって!」
ノックノイちゃんは、入社1年と少しですが、とても熱意があって将来有望なメンバーです。
「うわ~! よかったぁ!」
もう一同、にやにや、にこにこ、ふるふると総崩れです。

私たちの会社は現在総勢45名ですが、うち43名が女性でほとんどが既婚者です。
つまり、お母さんたちの会社なのですが、そのため妊娠中だったり、産休中のスタッフがいることがしばしばなのです。
しかし、出産は多くの女性が経験することであり、身の回りに次の世代が現れることは喜ばしいことです。
また、多くのスタッフが出産を機に一回りもふた回りも頼もしくなるのを私たちは目の当たりにしてきました。
「また、子供たちが、家族が増えちゃいましたね、お仕事、がんばらないとね!」
私たちは、じんわりと責任の重みを感じながら、嬉しく言い合いました。

この会社が始まってすでに13年です。
入社当時は生意気で世の中にちょっと反抗的な女の子という風だったスタッフは、その茶目っ気や気骨は変わらないものの、肝の据わった頼もしい中心メンバーとして在庫管理を仕切っていますし、新米お母さんだった人はもう安定の熟練技能者で公私の時間編集の達人になりつつあります。私やジャックさんがまだ新米だった頃を頼もしく支えてくれたベテラン母さんたちは孫ができて、すでにおばあちゃんという人も何人もいます。おばあちゃんといっても、それぞれまだまだ現役のいきいきと素敵なマダムたち、姐さんたちではありますが。
そして、スタッフたちが時折抱っこして見せに来てくれた乳幼児は、最近では恋やバイクに夢中で親を悩ませたり、年末年始のパーティーに大人びた様子で顔をみせてビールを飲んでいることもあります。
そうした仲間たちの成長や成熟、老いを見ていることは、あたかも大家族の歴史の物語の1シーンをみるようであり、時の流れを共にすごしてきたことに、静かな充実感があります。 個人が尊重されるものづくりを通し、他者とともにあること、互いの役に立つことを実感する、豊かな10余年をつみ重ねてこれたようにも感じています。

私たちは、こうした個々のライフステージの変化を受け止めながら、実際にそれに応じて会社の雇用の仕組みを変化させてきました。
たとえば、日本とは異なる多様な家族構成をもつタイの家庭にあわせた介護休暇の条件を工夫したり、産休制度におばあちゃんの育児休暇を作ったり、散々問題を起こしたものの仲間たちの助けで出戻ってきたスタッフのサポート、加齢による体調不良や持病でも本人に働く意欲がある場合の伴走のしかた、などなど。
そのおかげなのか、タイではどんな企業も悩まされるジョブホップはここにはありませんし、やむを得ず退職した人も、近所で暮らす人たちは、折に触れて会社に顔を出してくれます。
声高に、言葉にして家族のイメージを会社と重ねて組織の結束を作ろうと意図したことはありませんでしたが、個々のありようを受け止めてきた結果、いつの間にかジャックさんが図らずも家族といったように、それに近しい信頼関係が培われてきたのではないでしょうか。

まるで、新ブランドという私たちの新しい冒険の始まりに合わせるように、年が明けてまた新しい 世代を授かりました。
まだあと2名ほど、世に出るのを待っている子供たちもいます。
これから更に、10年またその次の10年と、仲間たちが良き日々を、人生を過ごしていけるよう、そしてそのたずきとして作られるものたちが、使ってくださる方たちの日々を心地よく彩ることができるよう、今年も誠実であると同時に、思いがけないようなものを作り、届けていくことができたら。と思っています。

さて、赤ちゃんといえば、私たちが作るものは、赤ちゃんのデリケートな肌にも良く合うものです。
モロッコのクレイはもちろん、優しいクリームを塗ったような洗い上がりになるコールドプロセスのオリーブ石鹸、そしてアルガンオイルのバームは、ふわふわと初々しくフラジャイルな赤ちゃんの肌をガーゼの産着のようにそっと包み、乾燥から守ってくれます。
石鹸チームのリーダー、メオさんは「とても清らかなもので肌を包んだように感じます」と、自ら作った石鹸やクリームの使い心地を語ったことがあります。
この世に現れたばかりの赤ちゃんの肌を洗い、包むにはぴったりではないでしょうか。(Asae.Hanaoka)

*写真は年末恒例のタンブンの光景。
最後にお坊さまやアチャーンから祈りがこもった紐サーイシーンを巻いていただきます。