2015年12月21日月曜日

石鹸のミツロウコーティングの話 our beeswax coated soap

手作り石鹸に関する情報もネットや書籍でたくさん得られるようになりました。輸入食材店などでお気に入りのオリーブオイルを買い、薬局で苛性ソーダを調達し、自宅で手作り石鹸を楽しまれる方もいらっしゃるでしょう。
石鹸づくりは薬品を使った化学反応ですので、マスクや手袋、エプロンなど、きちんとした防備と細心の注意は欠かせませんが、牛乳パックなどで型を作り、発泡スチロールの保温BOXなどを利用すれば、コールドプロセス石鹸づくりも意外と手軽にできるものです。

コールドプロセス石鹸は、上質な材料であればあるほどその原料オイルに含まれるビタミン類など有用成分を活かせますし、また保湿成分もたっぷりで、初めて使う方はその洗い心地に驚かれるでしょう。
しかしその潤い成分であるグリセリンは水に溶けやすく、製品化するためにはきちんと外気と遮断して密封しなければなりません。

私たちは今から10年以上前、コールドプロセス石鹸を多層ポリ袋で真空パックすることを考案し、市場にリリースしてきました。そして来春リニューアルデビューする私たちのブランド「eavam」では、この石鹸を密封する方法をさらに一歩進め(もしくは戻り?)ミツロウでコーティングした石鹸をリリースします。

ミツロウはボトルに入ったお酒を封するのに使ったり、チーズをコーティングしたりと、世界の各地で大切なものを密封するのに昔から使われてきた素材です。大切な手紙を封巻するシーリングワックスもミツロウです。
日本は印鑑社会なので、役所などへ提出する文書にはハンコは欠かせませんし、夏休みの小学生たち(男の子たち)は電車で回るスタンプラリーが大好きです。会社では各部署の承認印を集めてまわるスタンプラリーも未だ健在と聞きますので、印章にはちょっと垢抜けない印象もあります。
そこへゆくとイギリス映画『エリザベス』の冒頭で、赤いワックスに大きなシーリングスタンプを押すシーンはとても恐ろしくもでも優雅で印象的でした。あのワックスもミツロウです。

こうした古くて新しいトラディショナルな自然素材を再発見し、これを私たちの大切なコールドプロセス石鹸を密封する素材としたeavamの「ミツロウコーティング石鹸」は、そのアイデアと実用性を認められ、日本で特許を取得しています。
そんな私たち自慢の石鹸なのですが、今の寒い季節は少しばかり気をつけていただきたい事があります。

私たちが使うミツロウは、多くの大規模な養蜂農家がミツバチの巣のベースに用いるパラフィンなどの、夾雑物をまったく使わない、昔ながらのミツロウ100%のものに限っています。ラムヤイの花から蜜を集めるミツバチの巣から精製するこのミツロウは、アルガンクリームなど私たちのコスメティック製品の基剤にも使われるものです。
識別用(着色用)に付加するものもガスールなどの自然素材に限定していますので、いずれにしても、ケミカルな柔軟剤や乳化剤、石油由来の添加物は一切加えていません。

ですので、春や夏の暖かい季節(というかチェンマイではむしろ暑いのですが)なら、ミツロウも柔軟性があって扱いやすく、石鹸のコーティングを剥がすのも容易いです。
しかし、今の日本のような寒い時期には、ミツロウが硬くなり、石鹸の表面に張り付いたようになって、なかなか剥がしにくい場合もあります。
「自然素材」「天然素材」と言ってしまうのは簡単ですが、そこは一工夫必要です。

寒い季節の冷えて固まったミツロウコーティング石鹸は、まず剥がす前にゆっくりと温めてください。コタツなどがあれば最高で、コタツ布団の中で10~15分くらい温めると比較的上手く剥がれます。コタツがなければドライヤーが使えます。ドライヤーを弱にして数分間温風を当ててみてください。手のひらで触ってしっかり人肌になったら、ゆっくり紐を引っ張って剥がしてください。
一周ぐるりと剥離紐が外れたら、石鹸を手のひらで持ちながら、指の腹で力を加えながら優しく剥がしてみてください。コンパクトを開けるような感じでしょうか。最初は多少力が要りますが、密着したミツロウと石鹸の間にプシュっと空気が入ってきれいに剥がせたときは、結構快感だったりします。
手間の掛かる商品で申し訳ありません。(Jiro Ohahsi)

*eavamのミツロウコーティング石鹸シリーズは、来春日本でもデビューする予定です。手間の掛かる商品ですが、皆様が実際に手にとっていただけるまで、いましばらくお待ちください。