日常にあふれる音は色々ありますが、普段は耳を澄ますこともなく、聞こえるけれど聞いていないことがよくあります。
最近の私はよく聞いています。何を聞いているかというと工場の中の音です。面白いもので、朝から夕方まで一日聞いていると時間毎に聞こえてくる音も異なるのです。メールチェックをしている午前中やパソコン作業に没頭している昼下がりに、私の後ろからは様々な音が聞こえてきます。
まず、朝一番は出勤してきたメンバーから椅子をおろしたり、道具や材料を並べたりし始めます.みんな始業時間の30分ほど前から出勤してきて、ガタガタ・ガチャガチャにぎやかな音が聞こえてきて、工場が目を覚まし今日も1日が始まるなと言う気にさせてくれます。
午前中はみんなおしゃべりが盛んで、あちこちからにぎやかな笑い声が聞こえてきます。お昼の休憩を挟み、しっかり食べて少しだけお昼寝をして、気力も体力も十分に充電したら、午後の作業が始まります。午後も午前中に負けないくらいにぎやかで、作業スペースの一番端と端の人が話をし、間にいる人がそれを聞いて笑って、とても楽しそうな雰囲気です。
どんな話題なのか耳を澄ませていると、食べ物の話(今日のおかずは何にしようとか、安くておいしいトウモロコシをどこどこで買ったとか)が多いようです。健康の話(昨日病院に行ったら医師にこう言われたとか、誰々は血糖値が高いとか)もよく話題に上ります。
その中でも先日大盛り上がりだったのは昔の出産話です。ほとんどのスタッフが主婦であり母でもあるので、昔の出産エピソードになるとあちこちから声が飛んできて、それはそれは賑やかでした。
その合間にも満杯になった商品コンテナを移動して、次の材料を運んでくるゴロゴロというキャスターの音もひっきりなしに聞こえてきます。ラジオを点けて懐メロが流れれば口ずさみ、DJのトークに笑って、つっこんで。午後の休憩を挟んで最後の作業時間は、心持ちトーンが下がる気がします。一日手と目をフルに動かしてさすがに少々疲れてきたのか、おしゃべりの声も朝に比べると少数です。
それがまた、終業近くの片付けになるとにぎやかになります。手早く後片付けをすませると、朝とは打って変わり終業時間と同時にみんな我が家へ帰っていきます。きっと家でも母として、妻としていろいろな仕事があるのでしょう。そして、みんなの帰った後の工場は少し弱まった日差しの中で、ほっと一息ついているように見えます.
さぁ、今日もガスールリーダーのエードーイさんの話で一日が始まります。「おしゃべりをするのは良いけれど、手が止まらないように。チェックの目がおろそかにならないように」と注意がありました。
私は話を聞くときはまだまだ相手の口の動きを見ないと聞き取れないので、(特にここでの公用語は北タイ方言なのでなおさらです)作業中もおしゃべりには参加できず、もっぱら耳を傾けてみんなの話を聞くことになります。わかる内容もあればちんぷんかんぷんな内容もあります.
SAL Laboratoriesで働き始めて1ヶ月、まだ何をするにも一人ではできない中、目で見て・手に取って・勧められるものは何でも食べて(これは休憩時間のおやつです)・庭を歩き回ってあちこちに植えられているハーブの匂いを嗅いで・そして耳を澄ませて聞いて……。教えてもらうばかりで一日があっという間に終わっていきます。
まだまだ戸惑うことも多いですが、五感を研ぎ澄ませて、今日も吸収したいと思います。少しでも溶け込みたくて、近づきたくて……。(katsuyama)