バーンロムサイの麻生さんと谷岡さん、そしてダーウ。なおえさんとケンさん、そして夕子さんとでカレンの村へ。ある雑誌が主催するクラフトツアーの企画をお手伝いしており、その下見を兼ねて実際に私たちも体験しておこうということに。
少数山岳民族カレンの人々は、年配の女性たちを中心に今も色鮮やかな民族衣装を身にまとい、独自の伝統文化を守りながら、ほぼ自給自足の生活をしています。とはいえ車もあるしバイクもあります。テレビも衛星放送で観ています。連絡は携帯電話で行います。型落ちですがパソコンもありました。21世紀の現在です。観光地化された「山岳民族の村」ではなく、実際に生活している村とはこういうものです。「ほぼ自給自足」とはいえ、べつにまなじり決して現代社会と袂を分かったわけでは全くなく、日常の衣類も食べるものも住居も、その辺に豊富にあるか畑で育てるか、無ければ自分で作るかしているだけで、単に金銭と交換して得るものの度合いが極めて低いというだけのこと。
今回は夕子さんに仕切っていただきながら、カレンのメー(お母さん)たちに織りと草木染めを教えてもらう。織りは、人間の身体をMan Machineよろしくそのまま機織り器の一部として融合した、腰と腕と手先で織る手織り布。
染めは、今回は黒檀とインディゴで各自が持ち寄った白いシャツやブラウスなどを染めてゆく。
染料はそれぞれ、黒檀は実を砕くところから作り、インディゴは予め葉を水に浸けておいたものに石灰を加えたものを使います。私は白いリネンのシャツをインディゴで染めてもらいました。ユニクロの「プレミアムリネンシャツ」という名前で売られている通常品。初めてインディゴの匂いを嗅ぎましたが、どこか生臭い生き物の匂いがする。とはいえケミカル染料のつんとした臭いとは全然違います。
黒檀は染料の甕から出して干した直後は薄い茶色ですが、日光に当たると見る見る色が濃くなってゆくのが面白い。「この辺でやめ」と思っても日光に晒された黒檀はどんどん濃くなってゆきます。そう都合良く、人間の思い通りにはゆきません。均等に陽に当てるため竹ヒゴを使って凧のように拡げられた服は風に煽られ、さながらスーフィーの旋回ダンスのようです。(Jiro Ohashi)