2014年8月1日金曜日

エージョー母さん mother “air jo’’

私たちの会社は総勢40人ほどの陽気で明るく、笑い声の絶えない所帯です。これほど楽しいメンバーが毎日顔を合わせているのですから、日々様々なエピソードが生まれます。
「ラオラックガン」「ルーチャイガン」(タイ語でそれぞれ「愛し合っている」「心が通じ合っている」の意)が口癖のエージョーさん。ニックネームはエーさんなのですが、私たちの会社にはエーさんが二人いるため住んでいる場所によって呼び分けています。
エージョーさんの名前の由来は、メージョーに住んでいるエーさんからきています。ちなみにもう一人のエーさんは先日このブログでもご紹介した(「エードーイさん、采配を振るう」はこちらから)エードーイさんです。こちらはドーイサケットに住むエーさんという具合です。

写真:左側がメージョーのエーさん「エージョー」さん

スタッフの多くは主婦であり、母である人が多いので、皆総じて面倒見のいいキャラクターなのですが、このエージョーさんはその中でもひときわ面倒見がいいのです。
例えば休憩時間にエージョーさんの隣に座ってふと気づくと、いつの間にか手にはお菓子を握らされています。しかも右手にスナック、左手には蒸かし芋といった具合です。もちろん芋の皮はつるりときれいに剥いてくれています。
こんなこともありました。「昨日夫婦喧嘩をしちゃって、それから二人とも口をきいてないんだ」と私がお菓子を食べながらこぼしていると、「今日家に帰ったら夕飯に何が食べたい? って聞くんだよ」とすかさずアドバイスがかえってきました。「そういう時はね、必ず女の方から先に折れてあげなくちゃだめ。男なんて何も分かってないんだからね」と有り難い人生指南を受けました。

長年の夫婦生活の技を垣間見たこともあります。エージョーさんの夫はエージョーさんより10歳ほど年上で、区内の公共工事を請け負う仕事をしています。ある日農業用水路を塞いでしまった木の枝を取り除くという大仕事を終えた旦那さんが「打ち上げだー」とばかりに仲間達と現場でお酒を飲み始めた時も、頃合いを見計らったエージョーさんがしっかり迎えに来ていました。帰宅途中にたまたま通り掛かった私が、酔いの回ったおじさん達の質問攻めに合わないようにかばいながら、旦那さんの酔い具合を確認している姿はまさしくしっかり者のお母ちゃんでした。

一方、工場内でのエージョーさんは厳しい一面も持っています。お昼ご飯を食べた後、うつらうつらしながら作業をしているスタッフがいると「居眠りなんてしようものなら私が見逃さないからね。パシッと叩いて起こしてあげるよ!」と喝が飛びます。
もしも誰かが休憩時間終了間際に飴を口に放り込もうものなら、「ちゃんと噛み砕いて飲み込んでからじゃないと中には入らせないよ」と作業棟に入る扉の前で目が光ります。
エージョーさんのように妻であり母であり祖母でもある女性が、社会の中で自分の居場所を築いている姿を見ると、同じ女性としてとても心強く感じます。SAL Laboratoriesでは、女性ならではの細やかさや気配りを存分に活かして仕事をすることができます。自分の足で立って生活の基盤を作れていること。これが笑い声の絶えない工場の秘訣のような気がします。

冒頭の、両手にお菓子のくだりで私が「飲み物だけでいいよー」と断ろうとすると、「いい? ここではね・・・」と知られざるSALルールをエージョーさんは教えてくれました。この裏ルールとも言うべき内容は、「ここでスタッフになったからには体重が増えないと本当の仲間になったとは認められない」という世にも恐ろしいものなのでした。お茶だけでいいのにと内心で思いつつ、ここでお菓子を断ると仲間になるのを拒否していると勘違いされたら困るし、といろいろな思いが交錯し、結局は両手に握りしめたお菓子を毎回頬張ることになります。
あるとき、エージョーさんにこっそり体重を聞いてみたところ、ただいま8キロ増とのこと。身長150㎝ほどのエージョーさんにとってはなかなかの数字ですが、自分に当てはめて計算しても卒倒しそうになります。

工場にはいくつかの重量計がありますが、これはみな製品の重量を量るためのもので、まかり間違ってもスタッフがそれに乗ることはありません。でも女性なら誰しも、乗らずにはおられない強い誘惑があるはず。どうして誰もこっそり量ったりしないのかな。と不思議に思っていた矢先に、デスクの下に家庭用体重計がこっそりしまわれているのを見つけました。これは純粋にスタッフの体重を量るためだけに存在するもので、みな思い出したかのようにときどき引っ張りだしては上に乗っているようです。私も意を決して、働き始めて以来初めておそるおそる体重計に乗ってみたところ・・・なんとか現状キープ。ほっと安堵のため息をつきました。
今年に入ってから、人員増強のための新スタッフの採用が続いていますが、このこっそり置かれた体重計が、実はスタッフとして採用できるかできないかを分ける最終のテストだったりするのかもしれません。くわばらくわばら。(Momoko Katsuyama