2014年7月15日火曜日

ランナースタイル lanna style and modern office

ここ最近、当地の建築雑誌や写真集などを購入してパラパラと見ています。週末には郊外といわず市街地といわず、車でその辺を流しながら目についた建物があると停めて写真を撮っています。先日は旧市街にあるランナー・アーキテクチャーセンターへ行ってきました。
このランナー建築の博物館は城壁に囲まれた旧市街のど真ん中にあります。ターペー門とチェンマイの中心寺院ワットプラシンとを東西に結ぶRatchadamnern通りと、チェンマイ門とチャーンプアック門を南北に結ぶPrapokkao通りの交差する本当にど真ん中です。城塞都市は街自体が砦であり城でもあるので、その中心に建つ建物には自ずと意味があります。パンフレットによれば、この博物館はその昔ランナー王家(貴族)の住居であったとのこと。

ランナー王朝が絶え、今のチャクリー王朝(バンコク王朝)となってからは王家の機能も停止したはずですが、しかしこうして建物は残ります。建物の名前はクム・チャオ・ブリラット。“クム(Khum)”はランナー王室(および北部タイ王室)の伝統的な家屋を指します。“チャオ・ブリラット(Chao Burirat)”は18世紀後半〜20世紀初頭まで、タイ第二の都市であるチェンマイの政治システムの中で、もっとも高いレベルの官庁のひとつと言及されている建物だそうです。
この気品がありつつ華美な要素もなく、意外とシックなこの建物は、あくまで住居(?)とはいえ、庶民の住居とはやはり趣が異なります。普段はひっそりとしていて観光客もほとんど訪れることのないこの建物は、往時の都を感じられる場所としてとても好きなところのひとつです。

旧市街の真ん中のこのアーキテクチャーセンターはチェンマイ大学が管理所有する場所ですが、チェンマイ大の建築学部構内にはまた、ランナー様式のさまざまな建物を移築保存するランナー・トラディショナルハウス・ミュージアムがあります。庶民の質素な家(○○○おばあさんの家)から商家、豪農の家まで、さまざまなランナー様式の建物が移築されています。建物の多くは実際に中に入ることもできるので、人々の往時の生活を体験するには格好の場所だと思います。

私たちの会社社屋も、建ててからもうかれこれ10年です。こちらの強烈な日差しと強い紫外線、雨季の激しい雨に晒されてそろそろメンテナンスが必要な時期。これを機会にこの地の伝統建築の美しさを再認識するこの頃です。こうしてランナーの様式美に改めて触れると共に、コンクリートや鉄、アルミ、そしてガラスなどモダンな素材も柔軟に取り入れるのもまたこの地の人々の特徴です。
手直し、補修、ガレージの屋根(草葺きです)の葺き替えなどなど、メンテナンスや改修も意外と面白いものです。(Jiro Ohashi)