2016年8月3日水曜日

溶けやすいコールドプロセスソープと付き合うには(後編) 理想のソープディッシュ  our  eccentric soap 2

雨季が始まってそろそろヒト月が経ちます。
ダムの水が徐々に増加に転じているというニュースも流れ、まるで乾燥中のガスールのように乾いてひび割れた近所の貯水池の底も柔らかなぬかるみに戻って水たまりもでき始め、水鳥たちが集まるようになりました。

eavamの敷地でも乾ききって黄色くなっていたのが苦しい夢だったかのように庭や畑も緑が勢い良く湧き上がってきて、スタッフたちは休み時間や帰宅前には食材にするカラスウリの若い蔓やニガナや空芯菜摘みに精を出しています。
庭師のバーンさんは三日にあげず草刈りに追われています。嬉しい命の水ですがなにしろ田舎のこと、草があまりに茂ればサソリや蛇まで出てきてしまうため、草刈りは切実な作業です。

そんな私たちの頭上には、雨に洗われて空気が澄んだおかげで日の光は強烈になったため、遠くのスコールの束や積乱雲が白銀色に輝き、その反射光までも地上に降り注ぐのであたりには不思議な光が満ち、いたるところ神々しい気配が満ちます。
旱魃の続いたこの2年間、乾きとそれにまつわる不安に悩まされたぶん、水や土、太陽、植物、自然の力と尊さを改めて感じずにはおれません。

かくも美しく豊かな恵みを与える優しい潤いの雨季ですが、私たちの石鹸にとっては少しだけ悩ましい季節です。
もちろん、清潔な潤いを与える効果は一年を通していつも頼もしいものですが、前編で書いたとおり自らの保湿成分によって柔らかくなってしまう可能性が生じるのです。つまり石鹸の「世話」を怠ると豊潤な雨季の空気は石鹸の溶けやすさを増してしまいます。
そこで今回はちょっとの工夫で、その悩みをいとも容易く解決する方法をご紹介できたらと思います。

まず一番大切なことは「ソープディッシュの選び方」です。
なぜならソープディッシュも、その形によってはソープの溶けやすさを早めてしまうものがあるためです。

まず、コールドプロセスには合わないタイプを確認します。

お皿の底に穴が空いているもの:
穴から石鹸に残った水はそこから落ちる仕組みですが、ソープとお皿が接する面では、ソープから水気が逃がせません。コールドプロセスソープならずとも、溶けてお皿にソープが密着したり、穴がふさがって水切りができないケースがままあります。
ホットプロセスで石鹸分の比率が高い、溶けにくく固めの石鹸向きです。

スポンジでできているタイプ:
水切りを良くすることがコールドプロセスソープを気持ち良く使い切る「きほん」ですから、水をたっぷり含んでしまうスポンジタイプのソープディッシュも残念ながらマッチしていません。

コールドプロセスソープを上手に保管する基本は、一にも二にも水気を素早く切って、外に飛ばすことです。
この条件と、上に挙げたソープディッシュを比べると、なんとなくコールドプロセスソープに最適な条件が見えてこないでしょうか?

それは、
・ソープとお皿の接する面積が出来る限り小さいこと。
・水気をソープの周りに残さないこと。
つまり・・・
*ソープを、面よりも小さな線や点でソープを支える。
*素材は吸水性がないものが良い。
*極言すれば、限りなく宙に浮いたような状態にするのが最善。

という要素です。

限りなく宙に浮いたような・・・などと書くとまるで荒唐無稽ですが、とにかく浮かせられれば 良いのです。
例えばステンレスのワイヤータイプの石鹸を浮かせるソープディッシュならば、その条件を満たせますし、入手も簡単です。
実際こうしたタイプのソープディッシュでadatepe102(エクストラバージンオリーブソープ)を綺麗に使い切っているお客様もいらっしゃいます。

そんな目であたりを見回すと、意外に身の回りにはソープディッシュに見立てられるものがたくさんありそうです。

例えば・・・
お猪口など小さな器
(あまり高さがないものがオススメ。石鹸が小さくなってきたら器のサイズを変えましょう。ちょっとずらしてのせて、器の中に湿気をためないようにするのがコツ)

・クッキーの抜き型
(シンプルな形にすればクールになり、動物や星の形ならば小さな子にも楽しいしつらえになります。石鹸が大きなうちは縦置きにすると、より効果的です)

・バネやゼンマイ
(あまり小さなもの、繊細なものをソープにくっついてしまいますのでご注意を)

・珊瑚
プーケットの海で拾ってきた珊瑚に載せていたことがあるのですが、大好きな服飾デザイナー、ヨーガン・レールさんがこの方法を提案していることを知った時にはとても嬉しくなりました)

ソープディッシュも便利でインテリアとして楽しいものですが、身近なお気に入りを見立ててみるのも、物を増やさずお気に入りのもので水回りをシンプルにまとめる方法ではないでしょうか。

それからもうひとつ大切なこと。
石鹸を置く水回りをさっぱり風通しよくしておくことも肝心です。
換気が難しいユニットバスのような密閉性の高い洗面所の場合は、入浴後、スクレイパー(水切りワイパー)などで壁や床の水を取り除いてしまうのも、雨季の湿気・カビ対策も兼ねた便利な方法です。ついでにmidelt 102(ミデルトのガスール) http://eavam.com/clay/midelt102.html で浴槽をすべすべに洗い上げ、使用済みのタオルで残った水滴を拭ってしまえば、さらに完璧でしょう。コールドプロセスソープの魅力的な気難しさとソープディッシュの見立てをきっかけに、創意工夫の眼差しを縦横にめぐらせて、楽しく美しい水回りができますように。

eavamの石鹸たちの詳細はこちら
エクストラバージンオリーブオイル100% adatepe 102 http://eavam.com/adatepe102.html
肌がもちもちするアルガンオイルたっぷり sumimou 102 http://eavam.com/soap/sumimou102.html

写真は我が家の石鹸の様子。タイの家は複数シャワールームが多いので、水切れの良いステンレスホルダーの他にも、クッキー型、珊瑚など身の回りのものも積極的に見立てて使っています。クッキー型は内側が密閉状態になると石鹸が一部蒸れてしまうので、少しずらして使います。
クッキー型にはたくさんの種類があります。丸い型は石鹸を立てておけるので、石鹸をより良い状態で置けます。動物や花やクリスマスツリーの型などにすると、小さな子にも石鹸の「世話」を楽しめるのではないでしょうか。
(花岡安佐枝)