sal laboratoriesの魅力は、素材の持つ質の高さ・使う人や作る人にも安全であることだけにとどまりません。製品に携わる全ての人の知恵と技術、素材の原産地の文化や歴史から生まれた美しいデザインについて、製品自らがたくさんの物語を語ってくれるところも sal laboratories ならではの魅力です。
それらの物語をひとつ、またひとつと聞いていくうちに、行ったことのない国や会ったことのない人たちがとても身近に感じられてきます。そして、縁遠いと思っていたものごとと自分が繋がっていることに気づいたとき、日々の暮らしが自分の内側と外側からひたひたと潤ってくる感覚があります。そんな物語の中から、今回は器についての物語をお話ししましょう。
sal laboratories の製品は真っ白な陶器に入れられてお客さまの手元に届きます。手のひらに収まるほどの大きさの陶器の器は、まぁるくて、釉薬による光沢がまるで夜空に浮かぶ白い満月のような凛とした美しさがあります。このオリジナル陶器を作ってくれているのはチェンマイのお隣の県、ランパーンにある陶器工場です。(http://fromchiangmai.blogspot.com/2013/07/1chicken-bowl-01.html)
こちらの工場は従業員のほとんどが女性であるところや、みんな会社の近くに住んでいるご近所さん従業員であるところ(その証拠に工場の駐車場にはバイクや自転車がたくさんです)など、私たちとの共通点がたくさんあります。
陶器はひとつとして同じ形にはならない、こだわればこだわるほど奥の深いものです。アイデアが器という形になるまで打ち合わせを繰り返し、私たちの求めるものを理解してもらうために何度も陶器工場まで車を走らせました。
電話やメール越しで形の細部や印象を伝えるのは、形の無いものの上に肉付けをするようでとても難しく、ややもすると無理難題ばかり押し付ける顧客と思われそうになるところでした(私もイメージを伝えるのに必死でした(汗))。そうなってしまわないタイミングで、実際に出向いて担当者やデザイナー、現場の責任者と顔を突き合わせて話し合いました。
さすが向こうは陶器に関してのプロ。今までさんざん苦労して伝えようとしてきたことが直接会って話すと、みなまで言うなと言わんばかりの呼吸で伝わり、「例えばこんな感じ?」と見本を出してきてくれたり、「その方法は難しいけれどこれならどう?」と代替案を出してくれた時には今までの不安が嘘のように晴れ、往復4時間をかけて行く成果が十分得られるのでした。
化粧品と陶器の違いはありますが、私たちも陶器工場も常に新しい方法を試しながら開発をする製造業者同士です。自分たちが一生懸命考えたものが、あれもこれもダメと言われるほどがっくりくることはないでしょう。その気持ちは十分に分かるので、「ただNOと言うばかりじゃなく、私たちが作りたいイメージを相手のやる気をくじかないようにどうやって伝えよう」と力んでいたのが、いざ話してみると、なぜ私たちがNOと言うのかその理由を理解しようと耳を傾け一緒に考えてくれる、彼らは心強いプロ集団でした。
実際、器の歪みを最小限にするための焼き方を工夫してくれたり、納期の押し迫る中、より良い方法を模索してくれて、共にものづくりをする楽しさや一緒に悩んで解決できたときの醍醐味を、ものづくりの苦労とともに味わうことができました。
そのようにして出来上がった器に私たちの製品を入れてみると大きさもぴったり。丸いフォルムも思わず両手で包み込みたくなるようです。蓋を開けると玉石でも入っていそうな雰囲気もあるし、贈答用の和菓子のようにも見えます。
余分な装飾や模様のない洗練されたデザインでありながら、手のひらに収まった丸みが心まで丸くしてくれるような温かみも感じられます。器の白色は、かすかな光であっても器に反射しそこだけほんのりと明かりが灯ったように浮かび上がって映る白です。煌々と電気のついた浴室よりも明かりを落とした中に置かれる方がなんだかしっくりくる魅力を持っています。
器自体が人の心を惹きつけるので、中身を使い終わった後の使い道もその人のアイデア次第です。全ての器を重ねて食器棚に並べるのもいいし、大事なものをしまってもいい。何か大切なものを入れたくさせる、そんな器が完成しました。
化粧品を陶器の器に入れて販売することには、割れたらどうする、重い、コストがかかるという意見が当然社内でもありました。それでも出来上がった器に私たちの製品を入れたとき、「やっぱりいいなぁ」としみじみ思いました。私たちの製品との相性もぴったり、まるで美味しそうな食べ物のようだし、これがプラスチック容器やプラ袋だったらと想像すると、製品が持つ素敵な物語は語る行き先を失い、使い捨ての容器の中に閉じ込められてしまうところでした。
ぜひ私たちの製品を実際に手にとって、たくさんの物語を一緒に楽しんでください。暮らしに彩りを添えられるような素敵なものを開発し、うまく語れるストーリーテラーになれるよう精進していきます。(Momoko Katsuyama)