2014年6月4日水曜日

放蕩娘の帰還 the return of the prodigal daughter

戒厳令がクーデターとなり、週が明けた先週、王様によって正式に軍による政権が承認されました。
情報筋からは、おそらく次の選挙をする1年先くらいまでこの状態は長引くのではないか? とのこと。夜になれば、チェンマイ市内もあちらこちらに兵士が並び、検問所も設けられ、無意識にどこか緊張は残りますが、昼間に生活を限っていれば至って穏やかな毎日が続いています。

さて、先週抱えてしまった私たちの悩みと言えば、もうひとつの重大案件、ゲーちゃんの無断欠勤がありました。

喧嘩両成敗でしょうが、夫婦喧嘩でとても辛い思いをし、遠く離れた実家へもどってしまった彼女の胸の内は察します。とはいえ仕事はグループワークですから、こうしたアクシデントは無いのが良いに決まっています。
もし彼女が気持の整理がつかず今日復帰しなければ、ジャックさんやリーダー達ともう一度対策を相談。それでも収集がつかなければ、最悪はリーダーも経営もしたくない決断をしなければいけない可能性だってあるのです。
今の国だって、きっとそんな苦渋の調整をしているよのね。。と、普段よりも憂鬱な気持で出社しました。

そしていよいよ朝礼です。
ああ、大丈夫かな。どうしよう。。と思いながら皆が集まる場所へ行くと・・・。
いました、ゲーちゃん。
ユイちゃんと一つの椅子にお尻をくっつけて双子のようにぴったりと座り、他の新人たちのグループの中に何気なく溶け込んでいました。他の皆もいつも通りです。

今日は、ガスール固形を入れた袋の口をシーリングする日です。
ごつごつした硬いガスールの欠片の端は、あまり荒っぽく扱えば袋を傷つけてしまうことがあります。穴こそあきませんが、見た目は美しくありません。かといって、おそるおそる扱えば、作業の速度は落ちてしまいます。そのあたりのバランスをとるコツ、そしていかにシーリングを綺麗かつ丈夫に仕上げるかの奥義を、ベテランの姐さんたちがきりりと説明していきます。
新人たち、もちろんゲーちゃんも、うんうんと力強く頷き、その様子にはしっかり頭の中で作業工程を反芻しているのが伝わってきます。これなら、今日の業務も普段通りに気持よく進みそうです。

朝の新鮮な気分の中、製造工程確認が終わると、それまで静かに全体に耳を傾けていたジャックさんが、にこやかに、しかしぴりっと、また決して誰がと名指しはせず、全体に語りかけるように一言。

「色々、それぞれ事情もあるでしょうけれど、急な欠勤が必要な時は必ず電話で一報をお願いしますね。私たちの仕事は誰が欠けても上手くいきません。何ごとも協力しあいましょう!」
全員が「そうですとも!」と、微笑しながらうなずきました。もちろん、ゲーちゃんも少し照れくさそうに。

実は情熱的でエモーショナルなタイの人たちの気質ゆえ、時にこうした事件は長引くこともあり、「もしや」も覚悟していました。けれど、ゲーちゃんのおっとりした気質やユイちゃんの思いやりもあってか、今回の事件は高速解決でした。これでこの先一番気になるのは、この国の行方でしょうか。スタッフ個々人、そして企業としてもその毎日の営みを穏やかに続けるためにも。

ジャックさんがスタッフたちに語りかけたように、タイは西欧的なそれとは少し異なる、独自の優しくしなやかな受容の心を持つ人たちの国です。この国、それを形作る人の良さがにじむような解決を願わずにはおれません。
どのような場面においても「普通であること」とは、なんと大変なことでしょう。
だからこそ、私たちは、たゆまず日々を、ごく普通に丁寧に重ねて行こうと思うのです。(A.H.)