2016年4月28日木曜日

春夏のアルガンバームと日焼け対策  uv protection and argan balm

「アサエさん、この暑さはスーパーエルニーニョが原因なのよ! でも今年の雨季はいつもより少し早くなって、今度はラニーニャになるかもしれないのですって! 早く雨、降らないかしら!」

昨年に続きあまり思わしくない予想が出ているラムヤイの作柄を気にして雨の到来や天気の動向の調査に余念がないジャックさんは言います。
なにしろジャックさんの口から、エルニーニョ(しかもスーパー付き)、ラニーニャなどという言葉が飛び出すのを聞くのは初めてで、彼女がどれだけお天気を気にしているかがひしひしと伝わってきます。
ラムヤイの作柄といってもジャックさんの気がかりは、果実ではなくアルガンバームの原料となるミツロウです。
花がどれだけ咲き、そこで飼われる蜜蜂がどれだけ活発に活動できたかは、果実同様、降雨や気温はラムヤイの開花時期や量とおおいに関係があるためです。

「あたしもね、長く生きてきたけれどこんな暑さ、経験したことないねぇ。毎日毎日40度だなんてねぇ・・・」
良心的で美味しいと評判で、大勢のスタッフがここでお昼を食べに通うため、まるで社員食堂同然になっている屋台のおばあさんは、お店の陽射しは遮るものの輻射熱が強烈なスレート屋根の下、がらんとしたテーブルの間で、お釣りを支払いながら愚痴ります。
普段なら、食後もテーブルでおしゃべりに興じるスタッフたちも、あまりの暑さにこの頃は食べると少しでも涼しい会社へと、さっと引き上げてしまうので、相変わらず繁盛しているのにもかかわらずお店は変に寂しい様子で、おばあさんはそれがちょっぴりつまらないのです。

暑さには慣れっこの地元の人でさえ、未知の体感に戸惑い不安さえ覚える前代未聞の暑さと乾きの今年のチェンマイの暑季(ルドゥ・ローン)。外に出れば本当に肌が痛くなる熱風が吹き、干ばつで空き地の草は枯れ、牛は木の下で耐えるように座っています。貯水池はつぎつぎ干上がって果樹や庭木の中には立ち枯れるものも現れつつあります。地域によっては農業用水はもちろん、生活用水までも不足する事態です。
この強烈な熱に加え、北回帰線より赤道側にあるタイでは、間もなく太陽は頭上に差し掛かろうとしていて、この暑季は激烈・苛烈という言葉がふさわしい日々続いています。

私たちの会社の庭は、政府が干ばつの予測と注意を出した頃から、ジャスミン畑や生垣の下へと給水パイプを縦横に巡らせ、貯水タンクの元栓を開けば、植物たちの根元に必要最低限の水を滴らせる仕組みを、庭師のバーンさんやジャスミン栽培の先生とが準備しておいてくれました。そのため、かろうじて植物たちはみずみずしい緑を保ち、ジャスミンも白玉の花を咲かせ、庭はあたかも砂漠の中のささやかなオアシスの様子です。
乾きと熱気の中の、緑と花の香りに漂う水の気配はまさしくオアシスのごとく普段以上に尊く感じられ、相談を持ちかけてからすぐに設置を始めてくれたバーンさんたちには感謝してもしきれない思いがこみ上げてきます。また、この熱暑の下、バーンさんが庭へ出る時間を普段よりも減らせたことにもほっとしています。

そんな 熱気とバーンさんが丹精した花の香と緑が発するひそやかな水の気配を感じるたびに、私の中には数年前まで毎年数ヶ月にわたって携わったモロッコでの薔薇水作りの記憶がフラッシュバックします。 
それも標高の高いオアシスの、ダマスカスローズの花の最盛期の芳しく精妙な晩春よりも、薔薇水の蒸留を終えてボトリングを行うために街に戻った頃の、初夏から盛夏にかけてのマラケシュでの体験を、より鮮烈に思い出すのです。
おそらく、未体験の物作りの場で、時には現地の人たちとの相克にも悩んだ苦さと、知ることと作ることへの身をよじるような喜び、そして厳しく鮮烈な季節とがそうしているのでしょう。

マラケシュも夏になれば、やはり連日40度を超える猛烈な暑さと乾きに苛まれ、それが極まると「シェルギイ」という暑い砂嵐が吹き荒れます。そんな時、人は窓も閉めきって、外の暑さよりはかすかにひんやりした気配がある薄暗い室内で、ひたすら嵐が去るのを待ちます。
タイもモロッコも、強烈な乾きや暑さや陽射しが、もともとよく似ているのですが、なんとその極みにやってくる埃っぽい嵐も、チェンマイのお天気にあるのです。ましてここタイとモロッコは製品の原料で今も繋がっていますし、女性たちの肌がガスールやアルガンオイルで磨かれているところも同じです。おかげで、私は毎年暑季になると、マラケシュでのあらゆることが暑かった頃を思い出さざるを得なくなってしまうというわけなのです。

こちらタイの夏の嵐は「パユッ」と呼ばれています。4月から5月中旬の暑季から雨季の端境期に通り魔のようにやってきて、時には大木や電信柱をなぎ倒し、家の屋根も吹き飛ばす荒々しいものです。
シェルギイが過ぎた後のマラケシュには、夕立のような雨が降って、肌寒いくらいに気温が下がって徐々に季節の移ろいが始まるのですが、パユッも、暑季の終わりと雨季の到来という豊かな恵みの先触れであり、やはり大風の後に時には雹混じりの激しい雨が降るのもそっくりです。更に強烈な光や暑さや乾きという自然界のエネルギーの横溢や季節の移ろいに五感が苛まれながら、甘い花の香りを嗅ぎ、どこか苦しい恍惚が淡くある中でなお、ものづくりに神経をぴりつかせる自分自身の内側の状態も奇妙に一致してしまうのです。

さて、こんな目眩がするような強烈な一日が終わると、肌は、熱や乾燥と紫外線でやけにひりつくこともしばしばですが、ラベンダーアルガンバームを塗っておくと、そのダメージは随分違います。
もちろん、ミツロウが肌を乾燥から守ってくれること、アルガンオイルに含まれるビタミンEやポリフェノール、ラベンダー精油の鎮静効果もあるのですが、これにはもう一つ理由があります。
アルガンオイルには、UVプロテクションの働きもあるのです。

アルガンオイルが日本で知られ始めた頃、あるドキュメンタリー番組でオイルの生産にたずさわる女性の言葉が「昼間、オイルをつけると肌が焼けちゃうわよ」と日本語で吹き替えられているのを聞いたことがあり、おや? と思いました。
2000年に、初めてモロッコを訪れ、モロッコで最初のアルガンオイルを作る女性たちの組合「アマル」を設立したズビーダ・シャルーフ女史からもらった彼女のアルガンオイルの研究レポートには、アルガンオイルの効果としてUVプロテクションともあったためです。彼女は女性の就労の場を作る社会活動にも携わっていましたが、本来はアルガンオイルの研究者でもあったので、そのレポートの情報を確認するべく改めて日焼け止めのSPF値を調査するラボに私たちのオイルを検査してもらうことにしました。
その結果はSPF8PA+というものでした。

つまり、何も付けないよりも8倍の時間で同程度の日焼けをするということ。陽射しの強い季節にこれだけを日焼け止めとして使うことはできませんが、少なくとも、日焼けを助長するものではないことがわかりました。日差しの強いタイではさすがに難しいですが、日本ならば、秋冬の陽射しが弱まった時期の肌を休ませたい休日、テラスで洗濯物を干す時などの生活紫外線対策には、フェイスパウダーを併用すれば活用できそうな値とも言えるのではないでしょうか?
また、アルガンオイルは乾性のオイルなので軽い手触りで使い勝手が良いものの、カバー力やその効果の持続力の点では不足するのも弱点です。そこにミツロウを加えてバーム化することで、肌を乾燥から守る力を加え、オイルの効果を持続させることが可能となります。このミツロウの縁の下の力持ち的な働きによって、アルガンバームは、オイル本来の肌に活力を与える働きに加え様々なストレスから肌を守るようになっています。
しかも、トライアルセット「kamakura set」に入っているバームは、ラベンダー精油入りですから、様々な刺激や、つい念入りになりすぎてしまうクレンジングでデリケートになった肌を鎮静してくれる効果もあります。

ともあれ、チェンマイの暑い風と陽射しと乾燥の中、肌もちょっとサバイバルな感じで日々を過ごしている私たちは、寒い季節同様アルガンバームを手放せずにいます。
肌や足元の露出が多くなる分、踵や肘のケアも気になってバームの消費量がむしろ増えている感なきにしもあらずです。日本もそろそろ初夏の気配が近づいてくる頃、一見、しっかりした手触りのバームは少し重すぎると思われるかもしれませんが、つける量を調節すことでその重い感覚を排し、潤い不足の生じる部位にスポット的につけるようにすると、これからの季節にもバームが必要な場面がたくさんあると気づかれるのではないでしょうか。

写真は、朝ジャスミン畑で製品開発などで使うために花を摘むスタッフたちです。干ばつと山焼きの煙の影響で中にはマスクをしているスタッフもいます。そして干ばつ気味の中でなんとか踏ん張っているジャスミンの花。
最後は、eavamの基本ラインをお手軽に試せるトライアルセット「kamakura set」の中身。ラベンダーアルガンバームも入っています(まずはタイ国内のみの販売です。http://eavam.com/cream/kamakurasetb.html)。 (花岡安佐枝)